西白河地方森林組合

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組合長のつぶやき

組合長のつぶやきNO7

組合長

 今の日本では、残念ながら植栽費用の負担が大きく、再造林が進展していません。利用期が到来していても、国産材はほとんど使われず、使用されるのは間伐材が主になっています。このように植栽を実施していないということは、あと20年も過ぎれば国産材で柱を建てることもできなくなることを意味します。森林の若返りと森林資源の循環利用を進めるためにも、国産材をもっと活用してもらわなければなりません。

 周知のとおり、日本は国土の3分の2が森林で、木材資源が豊富な森林大国として成長してきました。しかし、現在の日本は、林野庁が公表した平成29年の「木材供給量及び木材自給率の推移」でも明らかなように、世界でも有数の木材輸入国となってしまいました。その輸入量は、国内の総需要量8172万2000m3(丸太換算)に対し5219万4000m3と63.9%を占めています。

 

 平成27年度の「森林・林業白書」でも、「日本の森林の約4割が人工林(育成林)で、昭和20年代半ばから植林されて成長してきた木々はその多くが本格的に利用可能な樹齢に達していて、その蓄積量は年々増え続け30億m3(平成24年)に達している」と指摘されています。つまり、輸入材の需要が増えたことで膨大な国産材が在庫として使用されずに蓄積されているということです。

 そんな中で、今、国産材を活用して「中高層ビルの木造化への挑戦」という全く新しい発想による都市づくりに挑もうとしている企業があります。この会社は、東京都中央区に本社を構えるヒューリック株式会社で、現在、銀座で日本初となる耐火木造12階建ての商業施設を計画しています。そして、同社から福島復興支援の一環として、当組合に白河産材使用の打診があり、種々検討を進めているところです。


 同社は、昭和32年設立の東証一部上場企業で、不動産の所有・賃貸・売買・仲介業務を手掛けています。不動産賃貸業として約270棟の不動産を保有し、東京の銀座・有楽町エリアにも21物件を有しています。同社では、高齢化進展、訪日外国人観光客増加、環境問題深刻化等の環境変化に対応するため、「3K(高齢者・健康、観光、環境)ビジネス」を新たなビジネス領域として推し進めています。
 木造建物への取り組みについては、環境問題を取り巻く「パリ協定」や「SDGs」などの世界的な潮流とともに林野庁のCO2削減への取り組みである「木材利用の拡大」推進を受けて、製造・加工に要するエネルギーの少ない木材を利用した耐火木造建築ビルの開発を精力的に行っています。
 同社の取り組みは日本の都市づくりの新たなモデルケースとなるのはもちろんのこと、国産材の利活用の拡大、地球温暖化の抑制など世界環境の改善にも大きく寄与するものと期待しています。私たち林業従事者も同社の取り組みに賛同し、一緒に近未来の新しい都市づくりに挑戦していきたいと思っています。

2019/12/01