新型コロナウイルス感染症が、日本経済に深刻な影響を与えています。林業関係も例外ではなく、木材の価格が下がり市場で落札しない事態が発生するなど、大きな打撃となっています。このまま長引きますと森林林業から離れる関係者が多くなることが予想されますので、一日も早く正常な姿に戻っていただきたいと願っています。
水資源としてまた災害防止の観点から、森林の大切さと環境保護運動を世界中に発信し、植林を他国にも波及させたアフリカ人女性初のノーベル賞受賞者であるワンガリー・マータイさんの話をしたいと思います。
マータイさんは、1977年から森林回復のための植林活動を始めました。単なる自然保護運動ではなく、木を育てることを通じて貧しい人々の社会参加の意識を高め、生活や社会を自力で変えていけるよう尽力してきました。アフリカ各地に3,000万本以上を植林してきたグリーンベルト運動の創設者で、地球環境保護とケニアの民主化、女性の地位向上等への貢献が評価され2004年にノーベル平和賞を受賞しました。ノーベル賞委員会は受賞理由について、「森林伐採はアフリカを砂漠化し欧州など他の世界にも脅威となっている。マータイさんの進めてきた森林保護は、地球の生活環境をより良くしていくために不可欠な要素となっている。」としたうえで、ケニアの経済開発などへの寄与もたたえました。ケニアで貧しい女性らを動員して植林運動を続けてきました。まだ森林植林を考えない時代から、持続可能な開発を考え植林活動に取り組んだ素晴らしい人でした。私は、ノーベル賞は画期的な研究開発をした人に贈られる賞であると思っておりましたが、マータイさんは植林を推進してノーベル賞を受賞しました。森林は地球上でなくてはならない大切な生態系の命だと思います。
また、マータイさんは素晴らしい言葉を世界中に発信しております。それは、「もったいない」であります。2005年、国連の女性地位委員会閣僚級会合での演説で、日本語の「もったいない」という言葉を環境保護の合言葉にしようと提案しました。演説中マータイさんは、「もったいない」という言葉はReduce(消費削減)、Reuse(再使用)、Recycle(資源再利用)、Repair(修理)の4つのRを示すと発表し、さらに「資源は有効に利用し公平に分担していけば、資源をめぐる争いである戦争は回避できるはず」と主張しました。
消費大国となった日本では、使い捨て文化が主流となっていますが、まだ私たちの文化の中にもこうした美しく有意義な言葉があることを嬉しく思います。
マータイさんは、日本においても旭日大綬章を受章されております。素晴らしいことだと思います。これから日本も新型コロナウイルス感染症で苦しい生活環境になることと思います。マータイさんの「もったいない運動」を、これからもう一度考えていかなくてはならないと思います。
2020/5/14