西白河地方森林組合

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組合長のつぶやき

組合長のつぶやきNO15

組合長 「森林再生・広葉樹再生」に全力で取り組む

 本県の林業界にとって大きなターニングポイントとなったのは、周知のとおり11年前の東日本大震災、それに伴う原発事故です。当時、私は県の会長(福島県森林組合連合会長)でしたから、会長として先頭に立って本県の森林再生に取り組まなければならないという強い思いに駆られたことを記憶しています。
 私は原発事故後の補償について、農業と同様で林業も「山に入れない」のですから、山に対して補償するよう何度も国に足を運び要請しました。その結果、県内の民有地の山林全域で「1ヘクタール5万円」の補償を得られることになりました。雑木の山林が対象で、多くが補償の対象になったと思います。 これは非常にありがたいことで、10ヘクタール保有していれば50万円、100ヘクタールでは500万円の補償が出ました。
 なおかつ、汚染された森林の木材が売れないため国に「森林を再生するための事業の新設」を要望し、こちらも実現に至りました。この事業は「放射性物質の影響により森林整備や林業生産活動が停滞している森林について、市町村等の公的主体が間伐等の森林整備とその実施に必要な放射性物質対策を行い、森林の持つ多面的機能の発揮を確保する」という趣旨で、「ふくしま森林再生事業」として主に浜・中通りが主体ですが平成25年度から実施し、現在も継続されています。
 森林は適切な整備を行うことで、林床に光が届くようになり、下層植生が回復し、水源かん養機能や山地災害防止機能などの発揮が期待できます。森林再生事業は一昨年から第二期復興創生期間として再度5年間継続されていますが、今後も放射線量への不安が完全に払拭されるまで国にお願いして継続していってもらいたい。森林再生事業に一丸となって取り組んでいることが、本県の林業界全体にとって大きなプラスになっていると感じています。さらに、昨年からは「広葉樹再生」にも取り組んでいます。震災前、県内の広葉樹は主にきのこの原木として出荷していたのですが、原発事故で出荷が出来なくなりました。ですから、以前のように出荷するには伐採をして新たに萌芽させ、きのこの原木を育成し広葉樹を再生していく必要があり、その取り組みを進めているところです。
 こうした中で、県内の広葉樹については全て「再生」を図っていくことが望ましいと考えています。特に会津地区はきのこの原木となる広葉樹の面積が多いにもかかわらず、「放射線量が低い」という理由で(整備が)放置されている状態です。ですから、会津の広葉樹についても制度の中で再生を進めていく必要があります。森林を適切に整備することは雇用の創出にもつながります。また、伐り出された広葉樹は製紙などのパルプ材や木質バイオマスの発電用チップとしても活用できます。
 そして、こうした一連の取り組みは、県・市町村が主体ですが、調整を図り、現在は森林組合も単独で取組を進めています。きのこの原木が出荷出来ないというのは山が機能していないということです。本県は、出荷出来るまで「森林再生」と「広葉樹再生」の2つを継続して取り組んでいく必要があります。また、事業を継続していくための国への働きかけは、県森林組合連合会の強力なリーダーシップも大切ですし、本県出身の国会議員の皆様にもご尽力いただくことが必要不可欠です。西白河地方の市町村長さんには森林の大切さをご理解いただき、組合員一同、非常に感謝しています。ぜひ、福島県の森林を守っていくため多くの皆さんのお力をお借りしたい。
 私はいままで、「物事が上手くいかないことを他人の責任にしないこと」を基本に、自分に何が不足しているのかを考えて行動してきました。同時に、常に物事を諦めないで努力することを心掛けてきましたが、それもまた多くの方々の支えがあってのことで、いまの私があるのは多くの方々に支えられてきたお陰です。今後も未来の日本、福島県の林業界の発展、振興を基本に、まずは森林再生、広葉樹再生に全力で取り組んでいきたいと思っています。
(財界ふくしま10月号への寄稿より抜粋)

2022/09/01